介護職という選択

介護職への就職を選択する方へ。現役デイサービス施設長からの情報提供

認知症、その妙な症状|どう向き合うか?

ハイチオールCホワイティア認知症と言う病気(老化現象?)があります。介護職に就くならばその症状は避けて通れず、どうしても向き合わなければなりません。慣れないと理解できない不思議な事に見えます。いえ、慣れれば何とかなると言うような物でもありません。四苦八苦してかかわりを深める所が三苦七苦くらいに思える程度です。介護の仕事を志望される方に認知症の症状にどう接したらいいかのヒント程度を提供できましたら。

認知症の症状

高齢者になると物忘れはたいていの人に多かれ少なかれ起きます。個人差は大きく、若くてもひどい人、超高齢でも大丈夫な人がいます。認知症の症状とは病的な物忘れ、記憶障害の事です。特性としては新しいことから忘れて行って幼い頃に覚えた事は比較的覚えています。短期記憶と言います。
今日は何日か、何曜日か、これも短期記憶。記憶の有効期間は一日。次の日になったら書き変えられます。こう言う所がわからなくなった症状の方は多いです。

物忘れは均等に起きません。まだらに症状が進む特性があるとも言われます。変な所は記憶に残ってかんじんな所が思い出せません。短期記憶は保持できないのに問題を解決するために身に付いた行動を起こす事はできます。記憶は抜け落ちても記憶以外の所、知恵、感情の起伏、気分は連動しないからです。取りつくろうとか空気を読むとかができる事があります。そんな症状があるとは全く見えないかもしれません。

思い出せないどころか忘れている事にも気付かなかったりします。何を食べたかが思い出せないのは認知症でない人でも良くある事。認知症になると食事した記憶そのものが抜け落ちる事もあります。食後に何回も食べていないと訴える場合はこの症状のせいです。

認知症の方が苦手な事

新しいことから忘れるため、練習のような事ができなくなるのです。積み重ねができません。練習とは何回も同じ事を繰り返し、ちょっとずつ変えて試行錯誤、来る日も来る日も繰り返して正しい方法に近付いて上達します。練習って言ってもスポーツや楽器演奏ではありません。例えば杖の使い方、足に障害が出て来たので歩き方を変えたり、手すりをしっかり使う等です。ひどくなると練習どころか杖の存在すら忘れてしまいます。機能回復のためのリハビリは困難になります。

片付け、整理も苦手になります。分類って一定の基準で類する物を集める事ですが一時記憶をしっかり使います。作業中に訳がわからなくなります。認知症の症状が進んだ方は長時間、荷物をいじって、片付けているつもりでもはたから見ていると散らかしているとしか見えない時があります。必要な物をそろえるつもりの作業がいらない物を詰め込んでかんじんな物を忘れ物する事が良くあります。

決まった事をするのも苦手です。食後に薬を飲むとか。今までできていたのにだんだんできなります。全然飲めなくなったり、多量に服用したり。飲んだ事を忘れたり、飲まねばならない事を忘れたり、飲むために持ってきた事を忘れたり。すぐに効かない薬だったら症状は残ったままですから飲んでないような気がします。

ある種のゲームもダメです。百人一首のような若い頃に覚えた歌の下の句を探すのは大丈夫でも神経衰弱(トランプ)のようにさっき開いたカードはどれで何だったかはきついのです。

なんにもできなくなるのではありません。洗濯物たたみのような同じ動作の繰り返しの連続作業は大丈夫です。手が覚えていると言うのはありますがさっきの動作の結果がすぐに見えていますから。訪ねて来た集金の方に対応はでき、世間話をしながらお金を払う事はできるのですが何の支払だったか、誰か来たのかどうかは忘れてしまいます。

認知症の方の人間関係

名乗る所から始まり、会話を通じてお互いの事を良く知る所から人は親しくなっていくと思うのです。ところが認知症の症状を持つ方は困難です。名を覚える所はできませんし、前回どんな話をしたかも忘れますし。人間関係を作る所は苦手です。
ところが認知症の方どうしが親しくなって楽しくお話をしているのは良く見かけます。当方の施設でも。見覚え、なじみの感情は残ります。これは短期記憶ではないからでしょう。聞いていますと初対面の挨拶の次に話すような事を延々と繰り返されています。生い立ちや家族の事、持病の話。語る方も初めてのようにていねいに、聞く方も初めて聞くように興味深く。
何十年の知り合いのようになられますが、片方の方が長く休んだりするときれいさっぱり忘れてしまって思い出す事もなくなるようです。再開されると今度は長く休まれていた事を忘れてしまわれて今まで通りです。

認知症が正しく理解されない事があります。特に家族にはその症状を受け入れがたいと言った方がよろしいかも。自分の肉親がそんなになっているとは認めたくないところが先入観になっているのかもしれません。そうなるとこんな事はできるはずだとの思い込みで期待してしまう、と言うよりできて当然だと。しっかりしてほしい、ちゃんとできるはずなのに、実はサボっているに違いないと言う想いがある限り関係が悪化します。

認知症の方の問題行動

認知症そのものは悪い物ではありません。寿命の終りに対する準備だと言った方もありました。困るのは認知症によって引き起こされる問題行動です。人間が生活して行く上でうまくやらねばならない事があって、それができない時、失敗する時に他の方に迷惑がかかる事が問題行動になるのです。

夜、失禁してしまい寝巻がひどい事になった。家族に見られると恥ずかしい。どうしたもんだろう。そうだ一時的に押し入れに隠そう。家族が仕事に出て、自分ひとりになった時に対処しよう、そうしよう。で、押し入れに隠した事を忘れてしまうのです。仕事から帰った家族が気付きます。家族からすると非常に腹立たしい出来事です。当人は忘れていますから説明もしどろもどろ。そんな事を忘れるとは家族は思いませんから、しらを切っているようにしか聞こえません。似たような事は度々繰り返されます。しでかしたらちゃんと言ってよとこんこんと説教しても、記憶に残りませんからさらに繰り返されます。ちっとも言う事を聞かない、馬鹿にしているとご家族は思うかもしれません。

介護職はこんな症状に対処せねばなりません。その対処の方法としてはまずその妙な症状を理解する事。新しい事から忘れて行くことがある症状、お客様の性格からこうなったのだろうと結果から原因までを逆順に推測する事です。問題行動は興奮を伴う事があります。興奮の原因は不安感。その原因をくみ取って問題行動に至った心の痛みを理解し、不安感を安心に変える事が対処になります。一般常識をもとにした理詰めでの説得は効果なしです。

問題行動についてはまた別ページに。詳しくは認知症による問題行動で。

認知症の症状について”かんり じんじ”のまとめ

かんり じんじうまい説明になっているかはちょっと自信のない所、説明にすらなってないかも。と言うのは認知症の現れ方は千差万別。一人として同じ症状はないし、法則性もないし、万能薬的なマニュアルを作ることもできません。ケースバイケースですから。認知症の症状そのものをどうにかする事は無理で医療の進歩が待ち遠しい所です。不安感を和らげ、落ち着いてもらう事くらいしかできません。それには認知症の方と一緒になって同じ視線から親身になる事から始めます。そんなことしたらだめだと言う頭ごなしは禁物。同じ気持ちになっていっしょに悩む事ができたら、できなくても理解しようとしているんだとわかってもらえれば信頼関係ができるでしょう。不穏な行動を取った事を忘れてしまっても信頼感は残りますから。信頼する人から言われたら納得できなくとも言うとおりにしてもらえるかもしれません。

施設にある木を一生懸命世話しているお客様があります。世話の甲斐あって毎年、きれいで可憐な花が咲きます。が、このお客様そこを忘れてしまい、いくら世話しても花が咲いた事がないと嘆いておられます。笑ってしまうのですがちょっと涙が出そうになります。

 - 介護職に知っておいてほしい事