介護職という選択

介護職への就職を選択する方へ。現役デイサービス施設長からの情報提供

雇われると言う意味|簡単な例で考える

農作業 雇われると言う意味について考えてみます。 というのは介護職とはたいてい会社員。施設の多くは一般企業と思いますので。そこから仕事の意味を考えいただきたい。話を単純にしたいので例を挙げてみます。
仮にこんな会社があったとします。甘里農園。私、社長です。趣味で始めた大きめの家庭菜園。できた作物は自宅の前に値段を付けて置いておく。その横には貯金箱みたいなやつを置いてお金を入れてもらう仕掛けになっています。

雇用主=従業員の時

甘里農園では私が雇用主=社長=従業員で一人だけです。こうなると何でもかんでもやらねばなりません。社長兼仕入担当兼作業員兼経理担当兼営業兼・・・。
何が起きても自分のせい。自分で決めて自分で責任を取る。
仕入れた物にお金を払って売れた分は集めて集計、収益は計算して税金も納める。ご近所さんに良い野菜が採れたよと営業。何もかも一人でやります。

社員を雇った

だんだん嫌になって来ましたがご近所さんの強い希望でやめられなくなりました。そこで農作業を人にやってもらう事にしました。採用されたのは穴田(あなた)君。仕事の内容は農作業だけ。
種とか肥料の仕入れ、取り入れと販売、売り上げ管理とかは今まで通り社長がすると分担しました。

権限の移譲

会社の全業務の一部を人に任せたのでした。これは権限の移譲となります。穴田君はぼちぼち自分の時間を使って農作業にいそしみました。種まきから始まって水やりとか害虫対策、雑草の駆除等が主な作業。時間の使い方は穴田君にお任せです。作物が実って取り入れの時期までがワンサイクル。複数の作物を並行して作りますので複数のプロジェクトが並行で進みます。

穴田君は自分の時間を使います。何日間作業するか一日何時間作業するか、どれくらいていねいに作業するか、手を抜くかは穴田君まかせです。これを権限の移譲と言います。

どれくらい時間を使うか。それは前任の作業員、社長が決めていました。権限があったのです。同時に責任もありました。サボるのも自由、でも売り上げが下がるのも自分の責任。この部分を穴田君に譲りますので穴田君の自由です。
とは言っても好き放題は困りますので半日を週に2回位と決めます。畑の状態によって3回になったり1回になったり、月木だったり火金だったり。そこは穴田君の都合で自由にしてもらいます。権限を譲っています。作物がちゃんと作れる範囲で。権限=責任と言えます。作物は作らないといけません、でもその責任の範疇で好きに作業したらいいのです。作業をどれくらいするか都合で良いのですが作物は完成しないといけません。

報告の義務

穴田君にはもう一つ大事な仕事があります。取り入れは社長がしますからいつごろかを知らせなければなりません。そうしないと社長は自分の都合で来て作物が熟す前に取り入れたり、タイミングを外してしおれるまで放置したりします。

穴田君の仕事は種まきから途中の世話です。その前の種の仕入れ、その後の取り入れは社長の仕事。仕事の切り替わる所は話をしっかりしなければなりません。社長は種を仕入れたよ、植えてくれと。穴田君は作業が終了しましたので取り入れてくれと。ここで報告と言う大事な仕事があります。

作業指示と完了報告

別の言葉で言うと作業指示と完了報告になります。別の言葉を当てはめるかもしれませんけど。これをしなさいと社長から。作業が終わりましたと従業員から。これがなかったら種は放置されるし取り入れのタイミングは逃されてしまいます。お互いの作業そのものは完璧だったとしても玄関先に農作物を置いて収入を得ると言う甘里農園の機能は果たせません。

報告の義務があるなんて事は穴田君を採用する時に一言も社長は説明しませんでした。常識的に当たり前のことで作業内容に含めるほどの事はないと。幸い穴田君も常識人、コンビネーションはうまく保たれました。

雇われる時には何の仕事かをはっきりさせる必要があります。そうでなければまずい事が起きるのはご想像の通り、でも明言されなくても報告の義務がある事は了解しておかなければなりません。

中間報告

完了報告の他にも報告は必要です。それが中間報告です。この間もらった種から芽が出ました、順調に育ってます、実がふくらんできましたとか、取り入れはいつごろになりそうですとか。
中間報告がなくていきなり作業完了報告、実が成りましたと知らされても社長は予定が入ってしまっているので取り入れに行けないなんて事も起きてしまいます。

芽が出ませんとか、もらった種から想定外の葉が茂ってますがもしかしたら種が違うとか、害虫にやられましたとか、病気になっているとか、肥料が足らないとか、水道が出なくなって水がやれませんとか。
中間報告なしで自分の作業範囲外の所、何か対策をしてもらう必要性を言わなかったら仕事を順調に進める事ができません。
がんばっているが期待通りの成果が出そうにない、失敗しそうだなんて時ほど報告は重要になります。

失敗の報告

失敗の報告も大事です。水やりをサボったから枯れそうですとか、おかしなことになっているのに気付きませんでしたとか、知識が足りなかったので注意点があるのを知りませんでしたとか。
その後の報告も必要です。水やりをしっかりしたら持ち直したとか。やっぱり枯れてしまったとか。おかしなことは修正して良くなったのか手遅れか。注意点に気を付けて回復したのかダメになったか。
これによって社長は計画(は大げさ?心づもりくらいかな?)を修正します。枯れたのならまた新しい種を買ってくるし、持ち直したなら作業継続だし、ひどい事になっているなら苦労の上、結局失敗するよりは抜いてしまって種まきの準備をしてもらおうとか。

そもそも報告って何のためにするのでしょうか。ある会社の専務さんに「相手にアクションしてもらう依頼だ」と教えてもらいました。
実が成りそうだ報告すると取り入れの時間を空けておけと言う事。おかしなことが起きたと報告すると対策しろと言う事。失敗したと報告するなら知恵を貸せとか次の作業の準備をしろって事です。順調ですってのは安心しろです(これはアクションを期待する物ではありませんが)。

報告の意味と注意点

報告が相手にアクションを求める物だとすると何のアクションをしようか決めさせることにもなります。それは正しい情報をタイミング良く提供する事です。でも何が最適なのかは判断が難しい所。芽が出ないとします。何日経ったかは大事な情報です。タイミング的には半年経ちましたでは手遅れです。昨日種まきしたのにと言うのはせっかち過ぎ。「ちゃんと水をやりましたのに」とかも必要ですが何回も成功していて当たり前の事なら省略可能です。かえって煩わしくなります。ただしいつもと違う事をしたのなら言う必要ありです「地中深く、2mの穴を掘って埋めてみました」とか。

正確に報告しようとしたらけっこうなスキルが必要です。スキルがないなら相手に質問をさせる糸口を提供する必要があります。ここは習熟したいところです。

そうは言っても報告の方法はまあ二の次。大事な事は報告すべき事が起きているかの判断力。異変に気付く注意力。相手が何を求めているかの洞察力・・・。
でも一番肝心なのは報告をしようとする気持ちとその行為です。

給料について

これがなければ雇われた事になりません。給料の形態は色々。月給制?時給制?出来高払い?いずれにしてもその金額にふさわしい責任がかかります。自分が稼ぎ出す金額より低いのが普通です。3万稼いで給料が5万なんて事はあり得ません。
例外もあります。雇い主にとってその事業は儲からなくても続けたい時です。関連別事業があって客寄せになって両方を合計すると採算が合うとか。

給料は誰にもらっているか?お客さんでしょ?と言うのは一つの正解でもあります。穴田君は作業員ですので野菜を買ってくれるお客様が見えないとしてもお客様の身になってより良い野菜を育てたいと言う意味で。
ですが給料を払っているのは雇用主です。お客様が払っているのなら、お客様が減ったら給料は減ります。
たとえ社長の立てる企業戦略が間違っていて売り上げが悪かったとしても給料は約束通りに払われねばなりません

業務命令

雇い主は「これをやって」と言います。これを業務命令と言います。雇われの身としては従わねばなりません。言う事を聞くから給料をもらえていると言ってもいいです。特に月給制の正社員になりますと。
間違った命令でも?その通りです。甘里農園ではスイカを作る事になりました。ところが時期は夏が過ぎ去って秋。冬の気配。穴田君としてはそりゃ無理、おかしいですと社長に進言しましたが聞く耳ありません。
逆らってはダメです。季節を配慮して勝手にキャベツを植えたりしてはダメです。君君足らずとも臣臣足れと言います。この場合経営者が変な事をしても従業員はちゃんとするの意味になります。
ところが季節外れのスイカを作る所に実は深い意味があるかもしれません。温室や暖房装置を用意しての企業戦略かもしれませんから頭からアホウな事を言い出しやがってとバカにしてはなりません。
そうではなくて植える時期を知らなかっただけとしても言う通りにする必要はあります。実は成らず、売り上げがなかったとしても給料は払われなければなりません。中間報告はしっかりする必要ありますけど。逆に言う事を聞かず勝手に立派なキャベツを育てたとしても命令違反で給料はもらえないかもしれません。

組織拡大

もうちょっと規模を大きくしたいと社長は思いました。農作業の量を増やして収穫を増やそうと。ところが穴田君は手いっぱいなので穴田君を農作業係長とし、係員を2人付ける事にしました。
人を雇うと権限の移譲になると書きました。部下の付いた穴田君の権限と責任は変わらず農作業で野菜を育てる事です。ただし部下の担当分も含みます。穴田君は新たに部下の指導、管理という仕事が増え、部下の仕事に関する権限と責任が新たに発生しました。このため社長は新入社員にねぎらいの声を掛ける等はしますが直接ああしろこうしろと業務命令はしません。それは穴田君を通じて間接的におおざっぱに。細かい所は穴田君におまかせ。
穴田君の報告の義務も変わりないのですが部下の育ち方、管理に関する報告が新たに加わりました。部下さんは今までの穴田君と同じく報告の義務があるのですが報告先は穴田君であって社長ではありません。部下さんの権限は自分が担当した畑だけ、他の人の方はノータッチです。

売り上げが増え、人も増えると経理の作業も増えます。実はここは苦手だし間違えるとよろしくないので経験のある人を雇う事にしました。また水道等の設備、農機具の管理も兼ねてもらう事にして総務課を作りました。新しい人は経理係と総務係の兼務です。

こうして人が増えて分担が今までに比べて複雑になり、縦割りになって組織になりました。専門化していますので農作業係と経理係はお互いの作業に干渉はしません。こうして係も3つになって簡単ではありますがピラミッド型が出来上がりました。

”かんり じんじ”が思う雇われることの意味

かんり じんじ

単純な例として農園を舞台に雇われるって事を考えてみました。会社員の経験のある方は物足りない話だったかも。権限の移譲、権限=責任、報告、給料、業務命令、組織とわかりにくい事でも単純化してみてわかりやすくなったんじゃないかと思っています。
話はここで終わるのではありますが実際の介護の現場になったらどうなるだろうと言う所は、読まれている皆様が読み変えて考えていただけましたら。ここでは書けませんでしたが介護の現場では資格の問題があります。経営者が無資格だとして看護師を雇ったとします。そうしますと看護業務に関する権限と責任は持つ事ができません。また介護福祉士は知識豊富です。そこに無資格の社長が口を出せる物ではありません。そんな所で社長はどうすべきかを考えてみてください。

経営者となって介護施設を運営したいと思った創始者の方は理想に燃えているはず。ところが時間が経過し、経営者の気が変わったり社会の情勢が変化したりします。経営者とは言え聖人ではありませんし間違える時も必ずあります。そんな状況になった時に雇われる身分としてどうふるまえばよいかは他の従業員さんと一緒に相談しながら進めてほしいと思います。

 - 介護職に求める物