介護職という選択

介護職への就職を選択する方へ。現役デイサービス施設長からの情報提供

介護職の給料が安い理由

安月給介護職って給料が安い、低賃金で重労働と言われます。その理由を検索してみても明快な説明にたどり着きません。前々から考えて一つの持論にたどり着いています。他の方は書いていませんのでこの持論はオリジナルかもしれませんけど、間違っている可能性もありますが、まあ読んでやってください。
給料とは労働者が貰うお金とします。対して一人分の人件費と言う言い方もあります。これは一人を雇う上でかかって来る経費をプラスした金額になります。社会保険料(健康保険、年金、失業保険の費用)は従業員半分、会社半分となっています。給与明細を見て天引き分が多いと思われる方もいますが、それと同じ金額を会社も負担しているのです。この他に退職金の積み立て分、会社で掛けている任意保険(あれば)等々も経費に含まれます。ここでは収支の面に注目、赤字=人件費に回せる金額が少なくなると言う視点で考えを進めてみます。

「給料の倍を稼がないとダメだ」と良く聞きます。
これには
・光熱費
・役員報酬
・建物の家賃
・開設前の初期投資の返済
・設備のリース代やローン支払い
・設備のメンテナンス費用
・事務員などの非現場職員の給料
等々が含まれます。福祉業界で倍は言い過ぎ。よろしくない経営者が無理に働かせようとする詭弁だと思っています。巨額の設備投資が必要な業界ならあり得ます。シンプルで言いやすいからと言って他業種と同じように語るのは間違いです。無駄な経費の節減等の経営努力の不足、役員報酬の取り過ぎだと思っています。赤字、赤字と騒いで従業員の怠慢を原因と言う経営者がいます。まず役員報酬のカットは十分にしたのかと聞きたいところです。

他の業界を見ると大型の機械等設備投資、原材料の仕入れがあります。福祉業界では労働力だけで成り立っているとします。

収入面の問題

収入が限られているから

介護施設は介護保険を収入源とすると介護施設の経営のページで書きました。入って来る金額に上限があるという事が結論、お客様の数の上限があるからです。これは人件費に回せる金額に限りがあると言う事になります。政策として介護保険費は増大中のため縮小傾向、値下げの話もあって給料的には厳しい環境にあります。

加算

介護保険には加算という物があります。イメージとしてはオプション。オプションが追加されると支払いも追加されます。
例えば私が責任者として務めるデイサービスでは入浴加算という物があります。お風呂に入れば、一人について500円が払われる仕組みです。入浴してもらうには介護が必要、そのための費用です。
介護職の人件費を時給千円と仮定すると500円は30分と変換する事ができます。これがお一人様の入浴時間の標準となります。これは一律です。自宅で入ったら?って方から寝たきりの人まで全て500円。危険防止のために世間話をしながら見ているだけで十分なお客様もあります。頭洗うのを忘れてますよ、下着は上着より先に着ないとダメですよと声をかけるだけの介護もあります。二人がかりで30分以上かかる方もあります。それが介護職一人が30分働く500円。
脱ぎ着の時間までを含んでいます。せわしないと言うご意見はありましょうが妥当だとして30分以内に終了したら黒字。超えたら赤字、一人以上の人手が必要ならさらに赤字。軽い介護度の人が多く、重い人が少し混じるなら割にあうのですが、実際の所軽い人は入浴不要と言いますし重い人は必ず入浴を希望されます。重い方の入浴は30分の費用では不十分です。
入浴担当のスタッフは浴室に消える事になりますから、留守番的な業務をするスタッフも必要になります。

資格取ったらどうか

資格手当と言う物があります。業務に関連する資格を取得したら毎月基本給にプラスアルファされます。介護施設以外の一般企業、特に技術系の所は「有資格者が担当しますから」と単価アップした売り込みができます。ところが介護施設の介護保険報酬の単価は一定額。無資格者が集まっても有資格者が終結しても同じ金額。
その資格を取った途端に45分かかっていた入浴介助が30分で終わり、人員の節約ができるって事でしたら資格手当を払う事も悪くないのですが。資格にはそんな魔法の仕掛けはありません。
サービス提供体制強化加算という追加報酬もありますが、これは全職員の中に介護福祉士が一定数いればという条件になります。一人だけ取得したとしても資格手当の資金源とはなりません。
また、この加算って不安定。サービスを濃くするための小規模施設で職員が少ない時、困ったりします。有資格の職員が辞めたら支給要件を満たさなくなります。

定期昇給がアダになる

誰も辞めなかったら定期昇給は積み重なります。しつこいですが介護保険報酬は一定額ですから各従業員の取り分は圧迫されます。古い社員が昇給したため人件費が多くなったとしたら新入社員の初任給は下げざるを得ません。一定の継続勤務年数を勤めればサービス提供体制強化加算を取れるのですが一段階上がるだけです。どんどん上がって行く物ではありません。

介護職員処遇改善加算

介護職員処遇改善加算という物があり、給与にプラスアルファされる物です。と聞いたらうれしいのですが、これは一時的な物です。一時的に支給するとあり、ある時なくなってしまうかもしれません。また誰にどれだけ払うかというのも施設で決めますのでアテにできません。

スタッフの問題

スタッフが多すぎる

人手不足の介護業界。人が多すぎるとはどういう事かと思われますが。大半の介護施設は一般企業。同業者間の競争があります。サービスが充実している所が勝ちます。何をサービスするにしても人のする事、人を増やさざるを得ません。介護保険ではスタッフの最低人員が決まっています。その最低限の人員で運用するとしたらサービスの内容も最低限。お客様の満足も最低限になります。
だからプラスアルファの人員を置きたいところです。介護保険報酬は上限が決まっています。例えば3人で分けるべき所を4人で分けると贅沢なサービスになるのですが赤字が発生します。

マンパワーは適正か?

スタッフが多すぎるという所でスタッフを増やせば取り分が下がると書きました。人手不足の介護業界、難がある人でも採用される傾向があります。頭数はそろうのですが人の質を無視した事になります。極論ですがあんなのを採用したからもう一人スタッフが必要になったって事があり得ます。後々その人が成長して戦力になればよろしいのですが。マンパワーの不足を人件費で補えば赤字、ベテランスタッフが頑張るなら労働の悪化になります。

”かんり じんじ”の考える安月給対策

かんり じんじ安月給対策ってな事ですがそんなに簡単な策はありません。介護保険の報酬の改善とか廃止されそうな加算を喰い止めるのはだいそれた事。たかが責任者ごときにはできないのです。責任者としてできる事は可能な限りの合理化を図り、山積みになっている仕事を効率的に片付ける仕組みを作る事です。
介護職の方としては合理化を推進するとともに技量の向上に努力し、一つ一つの仕事にかかっている時間を短縮して行く事です。そうして少数精鋭化する事によって不要な人件費を節減、増益にチャレンジする事です。初めて介護職に就職するとできない事ばかりで先輩たちの足を引っ張る事になります。それは仕方ない事だと割り切って少しでも早く先輩たちと同じレベルに、可能であれば超える事をこころがけてほしいのです。ただでさえ赤字が出る仕組みの中ですから。

 - 介護職に知っておいてほしい事