介護職という選択

介護職への就職を選択する方へ。現役デイサービス施設長からの情報提供

介護の心得|実施する時に気を付けている事

介護の心得 介護を行う時に心得としている事があります。介護はやみくもに実施する訳ではありません。私は昔習ったバイステックの7原則と言う物を基本に自分なりにアレンジしています。この7原則は一対一の場面で活用される心得のような物です。ところが職業柄、一対多でお客様に接する事が多いので足らない所があるとかんがえ、付け足もしています。別ページで介護職の仕事は奥が深いと書きました。それにはこんな事があるからです。

バイステックの7原則

ケースワークの基本的作法とされています。個別化・受容・意図的な感情表出・統制された情緒的関与・非審判的態度・利用者の自己決定・秘密保持となっています。いつかケアマネージャーを受験しようと言う方、ここは試験に出ますよ。
詳しい説明は専門の書籍や他のページに譲って軽い説明にとどめます。

そもそもケースワークとは?今はもう聞かなくなった専門用語です。利用者と話をして問題解決する時の心得だったのですが死語化しているとは言いすぎかもしれませんが、今や介護の現場では聞いた事がありません。今風に言うならカウンセリング要素の含まれた相談業務くらいの意味になります。昔は一対一で話をする時はとにかくケースワークでした。今やケースワーカーと言えば生活保護担当を指すのみです。

  1. 個別化
    お客様は様々な問題を抱えておられます。この問題を理解する時の態度です。同じケースは二つとないのです。ある方に良かった方法は他の方に通じると限りません。問題を考える際に先入観、偏見を持ち込まない事です。
  2. 受容
    頭ごなしに否定しない事です。お客様をあるがままに受け入れて問題を理解する事になります。時には不道徳、非人道的な場面に当たる事もあります。
  3. 意図的な感情表出
    利用者の感情の現れを妨げない事です。悪い感情も出してもらって自分の事を客観的に見えるようにします。また話を聞く際の感情表現に工夫が必要です。・・・個人的にはピンときません。
  4. 統制された情緒的関与
    利用者の感情に飲み込まれないように注意する事です。・・・これもちょっと良くわかりません
  5. 非審判的態度
    善悪の判定をしない事です。ダメな事はアウチ!と叫んで親指を立てて止めたくなるのですが問題を解決するのは利用者自身ですから。
  6. 自己決定
    問題をどうするかは利用者自身が決めます。こうしなさいと押しつけたり、問答無用でやってしまうのはよろしくありません。
  7. 秘密保持
    これは読んで字の通りですが、最近はきびしくなっています。施設外で大声で井戸端会議をするのはもってのほか。名前の入ったメモを持って帰って捨てるとか持ち帰り残業とかは要注意です。

1957年に出版されたとの事、多民族国家、人種的偏見、教育の格差、時代が背景にあるような。なんだかアメリカンな香りがします。そのせいか一部、私ごときには理解できない物もあります。
これらは一対一での対応での心得になります。ですのでケアマネージャーの試験に出るのです。ケアマネージャーの仕事は一対一ですから。さて介護職は一対多が多いのでこれに付け加えをしています。ここから先は私独自の考え方です。

平等

えこひいきはダメって事ですね。って言うのは早とちり。それはそれで大事ですけど。
昔国民全員に一律に2千円が配られた事がありました。これは平等でしょうか。金額的には平等ですが、もらう人それぞれで2千円の値打は違います。介護のサービスでも同じ事が言えます。

ほとんど介護の必要ない方と寝たきりに近い方に同じ内容の介護を提供したら平等でしょうか。重い方用の介護は必要ない方には多すぎ。軽い人用の介護では重い方の生命維持さえできないかも。

個別化によってそれぞれのお客様の問題点、介護の必要性が割り出されています。その必要性の何パーセントが満たされているか。それは量とか時間ではなくて満足度で測られるべきです。それが同じになったら平等なサービス提供だと思います。

定時定量

昔いた職員。利用者に接する時はハイテンション。特にレクリエーションの時になったらカン高い声でぎゃあぎゃあと大騒ぎ。明るいと言えばあれですが、どっちかと言うとけたたましいのです。利用者の受けはけっこう良かったと思います。にぎやかな雰囲気が苦手な方でも一生懸命やってくれているからとまあ好評でした。

さらに困った事にこの職員、体が弱い。体力を考えずに騒ぎまくるんですから疲れ果てて急な欠勤が何回もありました。そうしますと火が消えたように静かになりました。まあそれが正常な施設の状態なんですけど。利用者たちも落ち着いた雰囲気を悪くないと思われたようです。静かになったのもこの職員が急に欠勤しましたから手薄になってしまったせいもあったのですが。

この職員が欠勤しましたので代わりに出勤する職員をあわてて手配しましたが埋めきらない穴の所はサービスの量が少なくなってしまい大騒ぎの時と手薄な時の差が大きくなりました。日によってサービスが手厚い、薄いとなってしまい良くない状態となりました。

この例は施設全体の事でしたが、介護職個人の気分によってムラがあるのは困ります。機嫌が悪くて当たり散らすなんてもってのほか。体調が悪くてしっかり働けないのは止むを得ませんが、そうなる前に体調を崩さぬよう自己管理は大事です。

日によって、曜日によって、人によってムラがあってはなりません。人のやる事ですからある程度はしょうがないのですが、極力サービスは均一に提供したいところです。

自立援助

介護とはやってあげる事と誤解されがちです。理髪店、美容院では頭を洗ってもらえます。レストランでは上げ膳据え膳です。サービス業なら代わりにやってもらうと言うイメージがあります。でも、それらは介護ではありません。

利用者は問題を抱えておられます。身体の一部が不自由な場合が多いです。そこをやってあげたりすると動きにくい部位の筋力が低下するかもしれません。ましてできる所、残存能力と言いますが、ここは大事して、いつまでもできる状態にしておきたいところ、取り上げてしまうような行為は介護ではありません。
不自由な部位はできれば回復、無理でも現状維持、最悪でも低下の速度を遅くするように努めたいです。

お客様に洗濯物たたみ、昼食準備等々お手伝いをお願いする事もあります。ホテル等のサービス業では考えられない事です。任せっぱなしでは無理な事もありますので職員がするよりもかえって手間がかかる事が多く、うまくできない時もありますが。一種の作業療法にあたります。家ではさせてもらえない事もあり、作業そのものが喜びであったり、礼を言われるのをうれしがったりされます。

同じ視点から力まかせの介護もダメです。基本的には利用者がする。足りない力を補助するだけ。利用者の筋力をフルに使ってもらう前提で介護します。同様に歩行状態が悪化した方に車いすの常時使用に切り替えるタイミングは慎重を要します。利用者も楽になり、介護職も歩行を手助けするよりも楽、転倒の危険性もなく、移動のスピードも上がり、時間節約ができていいことずくめに見えるのですが、筋力が低下して歩行不能になる危険性は無視できないリスクになりますから。

甘やかしといたわりは似ていますが違うのです。

人権の尊重

お客様は人間です。ひとしく人権をお持ちです。いくら心身の低下があろうとも。高齢者は子供に帰ると言います。これは一見正しそうに見えます。子供に近い言動が見られても子どもそのものではありません。子供は成長して行きますし、高齢者は低下して行きます。子供には成した事が少ないですが高齢者は長く生きてこられて作られた自尊心は守りたいところです。

介護の現場では赤ちゃん言葉やタメ口が見られ、上から目線だと言われます。私は一概に否定はしません。ていねいな言葉だが内容は相手を軽んじているよりは良いと思います。ですがお客様に対して自分の立ち位置をどこに置くかは慎重に考えたいところです。このページの中に「やってあげる」と言う表現を何回か使いました。これが上から目線になります。

とは言ってもケースバイケース。時と場合によって変わります。他人行儀が冷たいと思われてよろしくない時、お友達づきあいが良くない時、関西風突っ込み「なんでやねーん」が効果を発揮する時もあります。

もう一つ気を付けなければならない事があります。作業として効率を考える時です。無駄を省いて所要時間を節約しようと思った時、お客様が不快になるのは間違いです。
例えばおむつ交換の時、無駄口をきかず、最低限な動作にすると時間を節約できるのですがそれはダメです。声かけから初めてお客様を驚かさないようにする、羞恥心に考慮して抵抗感を少なくする、体調をチェックするとか必要な時間は省略できません

”かんり じんじ”が考えた介護の心得

かんり じんじ

新人時代からいろんな介護職の方を見てきました。ベテラン介護員さんの動きを見たり、考え方に触れるとそのポリシーが見えました。それは一本の芯のように感じました。それを見て考えた事がこの介護職の心得になりました。バイステックの7原則は介護の場面では言われる事はありませんが私は大事だと思っています。バイステックをまる暗記すれば介護の心得がマスターできるものではありません。先輩介護職から、書物からたくさん学んで自分なりの心得を作ってもらいたいと考えます。
考える時にはあくまでお客様本位。不利な事になったり不快感を抱かれるのでしたら考えなおすべきでしょう。

 - 介護職に求める物